子供は思春期ごろには、さまざまな身体的症状(=不定愁訴)を訴えるようになります。
これらは、思春期発来に伴う、様々な身体のバランス(ホルモン系、神経系、心臓血管系)の変化によるものであり正常な現象です。
ほとんどの子供では、症状は軽いものにとどまり、日常生活に支障が出ることはありません。しかし、バランスの崩れが強かったり、心理的ストレスが多くかかっている場合などには、主として起立時の低血圧の症状が強く出て病的な状態となることがあります。この場合を起立性調節障害と呼びます。
起立性調節障害は基本的には起立時の低血圧が病態の中心で、最も中核的な症状は起立不耐症状(立ち眩み、長時間の立位困難、立位時の失神)です(つまり、朝礼中によく倒れる子は起立性調節障害なのだといえます)。
しかし症状はそれだけにとどまらず、同時に中枢性自律神経系の機能異常に関連した症状(睡眠障害、体温調節異常、精神症状)や、末梢性自律神経系の機能異常に関連した様々な症状(心血管系の症状、消化器症状、皮膚や発汗の異常など)が出現します。
具体的には、朝起きられない、イライラ、集中力の低下、動悸、胸痛、腹痛、下痢や多汗、無汗といった「不定愁訴」を呈します。周囲からは、「体力の無い子だ、保健室によく行く子だ、貧血気味じゃ無いのか」といったことを言われるようになります。
この中で最も問題になりやすいのは「朝起きられない」という症状です。これは、いわゆる「寝不足」とは違い「本人の意思に反して本当に起きられない」のです。しかし、昼を過ぎた頃にはけろっとしているので、「仮病」を疑われることになりがちです。
朝起きられないことが続くと、学校を休みがちになり、勉強に追いつけず、よりいっそう学校を休みがちになるという悪循環に入っていきます。現在、不登校となっている子供の中には起立性障害が見逃されている例も多く存在しているとおもわれます。
そういった意味で、この病気に関する知識を持っておくことはとても重要なことといえます。
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